「ありがとうね」その言葉で救われた。

朝から用事をせっせと片付けていました。

午後1時を過ぎた頃に、
家を出て、
銀行へ行きました。

銀行へ行く道中、
とても暑かった。

暑さの影響もあって、
少しイライラしていました。

イライラしていると、
やはり感じます。

余計な事を。

僕は大ケガを負い、
その影響で床ずれという症状が出ます。
その症状が酷くなって、
両足を切断しました。
それで車イスを使って生活をしています。

車イスで歩道を漕いでいると、
視線を感じます。

視線を感じる方へ目をやると、
自動車を運転するドライバーが、
僕を見ています。

そんなに俺が、
ジョニー・デップに似ているのだろうか?

僕を、
上から下まで、
舐めるように見るのです。

そして、
2度見のような感じで見られます。

「ん?車イスの人だ」
「あれ?足が付いてないぞ?」

そういう風に見られるのは、
もう慣れています。

慣れていますが、
イライラしていると、
心に余裕がなくなります。

僕は出掛ける時は、
「メガネ」をかけません。

近視と老眼があって、
1メートルを超えると、
ぼやけて見えません。

ぼやけますが、
まったく見えない訳ではありません。
細かい文字が見えなくなるだけです。

人の表情などは見えます。

なぜ?
メガネをかけないかというと、
少しでも、
他人の視線を意識しないためです。

僕を珍しい生き物のように見る人がいて、
その視線を感じて、
視線の先に目をやると、
視線を送ってた人が、
慌てて目をそらすのです。

その、
目をそらす行為を、
見たくないんです。

目をそらすというのは、
僕の姿を見ていて、

僕に対して、
「見る行為が失礼」
だと思うから?
目をそらすと思うのです。

もし、
そういった罪悪感がないなら、
ず~っと、
僕を見ているはずです。

そうなんです、
ずっと見ていたら、
僕に失礼だと思っているようなのです。

そうなんです、
見ていると失礼に思うのは、
「気の毒だな」
と僕を憐れんでいるからです。

憐れんでいると、
僕に失礼だと思うからでしょう。


自動車を運転する人が、
僕を見ている。

視線を感じた僕は、
自動車を見た。

すると、
運転手が慌てて目をそらす。

運転手は、
気まずいから目をそらすのでしょ?

「いえいえ、
運転手は、そんな事を意識していませんよ」

という人がいるかも知れません。

では、
どんな風に思っているのでしょうか?

そんなに、
慌てて目をそらさないでも、
いいんじゃないでしょうか?


まあ、
そんな事は、
どうでもいいのですが。

イライラしていると、
ついつい八つ当たりしてしまいがちです。

駅前にメガネ屋がある。

メガネ屋の前を通る時、
若いカップルが、
メガネ屋の写真を撮っていました。

どこにでもあるようなメガネ店。

しかも、
観光地でもない、
奈良のクソ田舎にあるメガネ店。

どこが?
珍しくて写真を撮るのだろう?

何だか、
そのカップルが、
日本に観光で来て、
手当たり次第に写真を撮る、
中国人に見えてしまう。

イライラしていて、
八つ当たりです。


そして銀行に到着。

午後1時に家を出たから、
混んでいないだろう?
と思っていました。

すると、
長蛇の列でした。

また、
イライラしました。

やっと僕の番が来て、
お金を引き出しました。

そして、
銀行を出ようと振り返ると、
長蛇の列が無くなっていて、
銀行がガラガラでした。

それで、
またイラっとします。

銀行を出ると暑い。

そしてイラつく。

降ろしたお金は、
コンビニで通販で買った支払いに使います。

コンビニに向かう途中、
信用金庫の前を通ります。

すると、
信用金庫の中から、
美人な女性が僕を見ている。

美人な銀行職員が、
僕に笑顔を振りまいて、
口座を作らせようとしているのか?
と疑ってしまう。

だから、
無視しようかなと思った。

その女性の前を通り過ぎる前に、
何だか名残惜しくて、

「チラ見」

をしました。

すると、
その女性は「ポスター」でした。


無性にイラっとしました。

自分自身に。


そして、
駅の中にあるコンビニの近くまで来ました。

暑い中、
街中をウロウロしているので疲れます。

「そうだ、甘いものを食べて疲れをとろう!」

と思いました。

コンビニに行ったついでに、
大好きな「吹雪まんじゅう」を買おう!
と思いました。

少し僕の心が躍りました。

コンビニについて、
支払いを済ませ、
お目当ての吹雪まんじゅうを取りに行きました。

すると売り切れでした。

カチン!ときた。

腹が立つから、
美味しそうなバームクーヘンを買った。

余計な菓子パンも買った。

パインアメも買った。

八つ当たり的に、
衝動買いをしてやった。


何だろう、
今日は暑さのせいだろうか?

最近の僕は、
すぐにイライラしてしまう。

そして、
八つ当たりしてしまう。

こんなにイライラしていては、
コンビニを出て、
帰り道で、
この間のように、
自働車に引かれそうになるんじゃなかろうか?

そんな不安を感じました。

「落ち着け!俺!」

と深呼吸をした。

深く深呼吸をしていると、
視線を感じる。

改札口にいる駅員が、
深呼吸している僕を、
不思議そうな顔をして見ている。

僕はその駅員を見て、
「こっち見んな!」
とイラつくのでした。

深呼吸をしている所を見られて、
恥ずかしくてね。


駅のコンビニに行くには、
エレベーターを利用します。

エレベーターで地上に降りようと待っていると、
僕の後ろに、
老夫婦が並びました。

それと同時に、
エレベータのドアが開いた。

ドアが開いたとき、
僕は先にエレベーターに乗り込みました。

そして、
老夫婦がエレベーターに入ったのを確認し、
下りのボタンを押した。

地上に付き、
僕は急いで外に出ました。

外に出て、
外のボタンを押し続けました。

老夫婦が外に出たのを確認し、
その場を後にしました。


老夫婦は旅行にでも行くのだろうか?
お爺さんがキャリーケースを引いていた。

そして、
お婆さんが杖を使っておられた。

僕が先に、
エレベーターに乗った方が、
老夫婦に負担が少なくなる。

先に乗った僕が、
出口に一番近くなりますし。


去り際に、
老夫婦たちが、
何度も何度も、
僕に、
「ありがとうね、ありがとうね」
と声をかけている。

僕は振り返ることなく、
その場を後にした。

何だか、
照れくさくてね。


人は、
人に優しくすると、
心地良い気持ちになります。

それは、
自己満足かも知れません。

しかし、
親切にすることで、
喜びを感じるのは事実です。

科学的な言い方をすると、

人が誰かに親切にした時、
「幸せホルモン」
というものが、
脳内に分泌されるようです。

「幸せホルモン=オキシトシン」

オキシトシンというホルモンの影響で、
親切にすると、
何だか嬉しい気持ちになるのです。

まさに、
僕は、
老夫婦から、
「ありがとうね」
と言われて、
幸せな気持ちになったのです。


車イスで歩道を漕いでいる。

爽やかな風が吹いています。

先程の暑さがウソのようです。


本当に、
爽やかな風です。

道行く人々の顔は、
みんな笑顔に見えました。

自動車を運転するドライバー達が、
僕に対して、
「暑いから気を付けや!」
と労ってくれているように見えた。


僕の心が変わると、

目に飛び込む世界が変わりました。


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